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第0回:タイムリープカフェ、はじめます

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もしも10年前の自分たちに語りかけるなら

「もしも10年前の自分たちにちょくちょく出会うとしたら、どんなことを伝えるか?」
SF小説をはじめよう、というわけではない。私の仕事の一部分は、まさにこんな問いを突きつけられる場面ばかりなのだ。さて、私の職業は何だろうか。
・・・正解は、大学教員。法学の研究をしながら、教壇にも立つ。行政法と環境法を教えている。そして、学生の相談や質問を受ける日々を過ごしている。学生の質問の中には、「ああ、その悩み、10年前に通ったよ」といいたくなるものがたくさんある。学生から見れば、「先生と自分は違うよ」と思うかもしれない。しかし、新米大学教員というのは、ついつい、「まるで10年前の自分に語りかけているようだなあ」と思いながら過ごしているものなのである。そういう意味ではまだ学生気分が抜け切れていないのかもしれない。
この連載は、仕事中にそんなことをうっかり考えてしまう若手法学研究者が、その気づきを忘れないうちに、”10年前の自分たち”に対して真剣に、誠実に、されど肩の力を抜いて、語りかけるようなコンテンツをお届けすることにしたい。

もしもブロガーが研究者になったら?

ううむ・・・自分のことを「若手法学研究者」って紹介するのはちょっとまだ肩に力が入ってしまっているね。確かに今の私は大学で研究しながら教えている人であるけれど、10年前は「ブロガー」だった。ブロガー女子法学部生(まあ、そんな言い方は無かったけれど)。
ちょうど10年前の2005年の春に始めたブログ。当時はまだツイッターもなかったから、日々のぼやきもすべてブログに書いていた。…うっかりゼミでやった報告までアップしていたことがきっかけで研究者の道に進むことになったのだけど、この話をすると長いのでまたの機会に。
とにかく、その記事を読めば、法学を勉強する過程でどんなことにつまづいてきたのかが手に取るようにわかってしまう。
そして、その悩みには、ネットを通じていろいろな「先輩」たちが救いの手を差し伸べてくれた。この様子も、今なお色あせないで見ることができる。
ある先生が私のことを評して曰く、「横田さんは研究者がブログを書いているんじゃなくて、ブロガーが研究者になったらどうなるか、っていう社会実験だね」と仰ったとか・・・。
ええ、当時のブログにも「普通の大学生が法学研究者を志したらどんなとんでもない目にあうか」的な(半ば自虐的な)記事をアップしたりして、そのたびに励まされたり、いまから思えば大変貴重なアドバイスをいただいたものだった。
誰にも見通せないイバラの道を進むにあたって - Kaffeepauseの日記
10年前、大学4年生の夏に進路に迷って書いた記事です

当時、ロースクールから博士課程に進学した人はまだ誰もいなかった(そりゃ当たり前だ、ローができたばかりのころなんだから)。だから、法学のことも研究のこともうまくイメージできなかった私にとって、ネットの海の向こう側にいる「修士課程から博士課程に進んだ先輩たち」からもらったアドバイスはとても参考になった。
自分にとってはひとつひとつの記事が記憶装置。だから「10年前の自分なんて、そんな前のこと覚えているのか?」と、いぶかしむ読者もいるかもしれないけれど、心配はいらない。もちろん、目の前の学生に聞かれて思い出すことも沢山あるし。

タイムリープカフェのねらい

10年前に差し伸べられた手を、今度は自分が出す番がきたようだ。時間跳躍ものSFでは、「未来から来た自分」に助けてもらったりするとパラドックスが起きてしまう。幸い、目の前にいる学生と、私の人生は異なるものだから心配ない。きっと、ブログ上の先輩たちがしてくれたアドバイスが当時の私を奮い立たせた程度には、いまの学生がちょっと楽になるかもしれない。それくらいの気持ちで、書き綴ることにしたい。
あなたとわたしの人生は違うけれど、もしかしたら役に立つかもしれない。
もちろん、時間跳躍ものSF自体がそうであるように、後から動く主人公は、前に動いた主人公よりもきっとうまく立ち回る。前に動いた主人公がエライというわけでも、ドンくさいというわけでもない。あなたはあなたの人生をうまく生きてほしい。そのために、つまづいたことも、おもしろいことも、少しづつ書いておくので。

すでにあるブログとこの連載の関係

話がだいぶ法学からそれてしまった。この連載はあくまで、法学を学ぶ人たち向けというスタンスをとりたい。というのも、もともとがブロガーである私は、すでにいくつかのブログを運営しているからだ。ブロガーという人たちは、「書きたいことが自分の判断だけで公開できる場所」をこよなく愛していて、書かずにはいられない性質を持っているのである。

「カフェパウゼをあなたと」

2012年に再開した個人ブログ。「ぱうぜ」というハンドルネームは旧ブログからひきついだ。再開した経緯はこちら。
2012-06-15 - カフェパウゼをあなたと
ここは「趣味で運営しているので何を書いてもいい場所」。手帳の話も、イベントの話も、気が付いたことも。

「横田明美研究室」

2013年に千葉大学に着任した後に開設した個人ウェブサイトにもブログコーナーを設けた。あまり記事は多くないけれど、あくまで研究者としての立場で書いている。
横田明美研究室

「ぱうぜセンセのコメントボックス」

ブロガー仲間と運営している、新社会人向けの記事を多く扱うブログメディア(ブロガーが集まって運営しているサイト)であるアシタノレシピ -明日を楽しくするレシピ集-で、私は学生の質問をもとにした対話形式の連載をしている。
ぱうぜセンセのコメントボックス
法学に限らない、学生の悩み相談を対話形式で。

ここでは、講義には直接関係がないけれども、どうしても知っておいてほしいことや、学問の専門を問わずに重要だと思うことを中心に書いている。通称「ぱうコメ」。
なお、このブログのタイトル画像と各回のアイキャッチを担当してくださっているのはライフハック漫画家の岡野純さん。ぱうコメの画像に引き続いてお願いした。
純コミックス | 会社員、おとうさん、そして漫画家のドキュメンタリーブログ
岡野純さんのメインブログです

それでは「タイムリープカフェ」は?

いままで書いてこなかったのは、「法学の授業だけではついつい教わらずじまいになってしまいそうなこと」。現在教えている千葉大学では、学生と教員の心理的距離がとても近い雰囲気があって、講義内容以外の質問もたくさんいただく。その中には、どうしても「ぱうコメ」に書くには法学の専門に入り込みすぎているテーマがある。個人ブログでは、なかなか拡散力がない。弘文堂という法学専門書を出す出版社サイトという力を借りて、法学を学ぶ人向けに、「10年前の自分たちに伝えたいこと」というキーフレーズに沿うものを中心に書き綴っていく。なお、カフェとついているのは、本当に研究室でコーヒーを飲みながら話している内容を基にしているためである。

次回以降の予告

第0回なのにだいぶ長くなってしまった。最後に、次回以降の構想メモを少しだけお見せしたい。

  • 答えが一つじゃないってどういうこと?~高校までの学びとの違い
  • ゼミに出ないなんてもったいない~事例と体系を往復しよう
  • なぜ教員は教科書を買ってもらいたいのか~教科書との付き合い方
  • ひとりで勉強するモード/みんなで勉強するモード~自主ゼミのススメと注意点
  • 何周もまわることを恐れないで~ショートケーキを作るように学ぶ
  • 「わからない」で止まらずに、わからない理由を書き出そう
  • 経済学、政策学と法学の関係~対象と手法の網目を意識する
  • 学部からローに進学してビックリしたこと~縦糸を学んだら横糸を学ぼう
  • ローから研究者へ~実務家養成課程から研究者養成課程へ進学するあなたに

これらは、10年前の自分たちに伝えたいこと。…あえて予告編のように書いたけれど、何を言っているのか皆目見当がつかないかもしれない。でも、少しずつ語っていくので、ぜひお付き合いいただきたい。私自身も、初心に戻って、法学というものの考え方に向き合っていきたい。きっと10年後の未来につながっているはずだから。
さて、さっそく第1回は、「答えはひとつじゃないんですか?」という法学初心者の質問から向き合っていこう。
この連載は毎月第2金曜日に前編を、第4金曜日に後編をお届けする。というわけで第1回前編は明日(2015年4月10日(金))公開!

第0回のまとめ

  1. ブロガーから法学研究者になった「ぱうぜ」=横田明美がお送りします
  2. 10年前の自分に向けて書くような気持ちで、画面の前のあなたに
  3. 講義からは漏れてしまう内容の質問/疑問大歓迎です
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