『義務付け訴訟の機能』はこう変わった~書籍化によせて

大幅書き直し、追加があります!

タイムリープカフェをご覧のみなさま、お久しぶりです。横田明美です。
すでに編集部からのお知らせにあるように、
このたび、弘文堂から「行政法研究双書」シリーズの一冊として、『義務付け訴訟の機能』を刊行させていただきました。
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義務付け訴訟の機能 32 | 弘文堂
弘文堂ウェブサイトに詳細な紹介があります。


概要と変更点

本書は、平成16年の行政事件訴訟法改正において法定された義務付け訴訟のうち、特に申請型義務付け訴訟について、改正後10年間の運用をみることで改めてその機能を考察し、それが担っている機能と整合的な制度理解および解釈指針を導き出すことを目指したものです。申請型義務付け訴訟とは、ある市民が許可や給付などの行政処分を求めて行政庁に対し申請をしたにもかかわらず、拒否処分を受けたとき等に、拒否処分の取消訴訟等と併合して提起して、望む処分の発給を行政庁に対し義務付けることを求める訴訟のことです(行政事件訴訟法3条6項2号)。
これまで『国家学会雑誌』および『公法研究』にて連載・公刊した私の博士論文をとりまとめ、再構成し、大幅な加筆修正を加えました。
雑誌連載版については、学会・研究会においてそれらにつき報告する機会を多数いただいたほか、多くのご批判・コメントを賜りました。誠にありがとうございます。このたびの書籍化にあたっては可能な限りそれらに応答することとし、特に次の点について大きな変更があります。

  1. 著者解題と図表4点を追加
  2. 第1章に、「情報公開」類型およびそのほかの裁判例に対する概観を追加
  3. 第2章と第3章に補論を追加
  4. 第4章を二分し、第4章:義務付け訴訟と取消訴訟の関係と第5章:義務付け訴訟の嚮導機能とに分割
  5. 第5章に、「違法の階梯論」・「救済の階梯論」を追加
  6. そのほか、2013年以降に出された義務付け訴訟論に関する論考の反映等

そのため、おおむね全体の3割程度は書き下ろしとなっております。

ブログ読者の皆様向けにひとこと

「あれ、ちょっとお堅い内容・・・いつもと違いすぎて戸惑う」
とお思いのブログ読者の皆様もいらっしゃるかもしれません。
同一人物です、ご安心を。
「ブログと違って、難しそうで読める気がしない」
という方もいらっしゃると思いますので、この「ブログ版ごあいさつ」ではもう少しだけ、ブログ読者の皆さん向けにかみ砕いた内容で、タイムリープカフェの内容と絡めたご紹介をさせていただきたいと思います。

どうしても追加したかったこと

雑誌連載から3年が経過したこともあり、追加された内容はいろいろとあります。
その中でも、どうしても追加したかったものが、著者解題と図表です。
著者解題とは、文字通り、「著者による解説」、つまりは本の要約ですね。
本書は、行政法の研究書として出版されています。
しかし、第5章の後半から終章にかけては、狭い意味での「行政法」を少し踏みこえて、政策実現のあり方など、本書が行き着いた議論を広げるような記述があります。
また、第1章では国内の裁判例から義務付け訴訟の展開を追いかけているのですが、そこでは、タクシー運賃認可、障害者の方々への支援、生活保護、外国人の在留特別許可、(書籍版から追加の)情報公開請求など、実に様々な種類の紛争があります。これらの紛争については、現実に困難に直面している弁護士の方々からお話をうかがったり、関係する書籍を参照したりして、判決書からだけでは知り得ない事情についても記述しています。

できるだけ幅広く、裁判や行政に関わる人々、政策を動かしていく人々に手にとっていただきたい。
「鳥の目」読みでもいいから、とにかく骨子を伝えたい。
その思いから、行政法学や行政訴訟についてあまり詳しくない方々にも読んでいただけるように配慮しました。
どの章にどのような内容が書いてあるのかは、「はじめに」・「目次」に加え、「著者解題」を読んでいただければ、だいたいのところはつかめるようにしてあります。

また、第2章のドイツ法の展開についても、文字だけではなかなか伝わりません。かなり複雑な箇所なので、こちらについては図表が3点あります。そして、最も視覚的に伝えたい、「行政過程と司法過程の往復」についても、図表をご用意しました。どの箇所にあるのかは、目次の末尾で一覧できるようになっています。
もちろん、私の立論が本当に成り立っているのか、説得的な記述となっているのか、本文につきご批判・コメントもいただければ幸いです。

なお、「はじめに」・「目次」・「著者解題」と、図表が含まれるページについては、ウェブでも「立ち読み」ができるよう編集部にお願いしているところです。準備ができ次第、こちらにもリンクを追記します。いましばらくお待ちください。

タイムリープカフェとつながる思い

さて、せっかくなので、タイムリープカフェとの関連についても述べておきたい・・・・・・のですが、これは、本書の「はじめに」を読んでいただければ容易にお気づきになると思います。
「答えは一つじゃないんだよ」
「気になることはどこか根っこでつながっている」
「このメンバーで、自分の役割はなんだろう?」
いろいろ、タイムリープカフェでは思いの丈を書かせていただきました。これらは、わたくし横田明美が、大切な人たちから受け継いだり、来し方を振り返ったときに出てきたフレーズです。また、これからも大事にしたいことばでもあります。
また、本書を世に出すにあたっても、折に触れて思い起こしていました。
例えば・・・・・・義務付け訴訟の「一定の処分」の内容について、「答えが一つ」だなんて、誰が決めたんでしょうか。誰が決められるのでしょうか。そういう思いが、本書の出発点の一つです。この「一定の処分」が義務付け訴訟の議論においてどのような意味を持つのか、本書においてどのような事例が語られているのかは、ぜひ、「著者解題」や本文でご確認ください。

書評のご案内

このままではやや抽象的な書き方になってしまいますので、以下では、既に公開されている書評をご紹介します。
第6回:【書評】横田明美著『義務付け訴訟の機能』 - 若手弁護士が解説する 個人情報・プライバシー法律実務の最新動向
松尾剛行弁護士による書評です。


もっとも、通常の書評とは少し違います。松尾剛行先生は本書執筆にあたり、原稿段階から何度も何度もアドバイスをくださった方です。そのため、本書の内容を発売前からご存じでして、書評においても本書の内容の核心部分が紹介されています。
今回は情報法に詳しい弁護士としてのお立場からの書評をいただきました。ありがとうございました。

タイムリープカフェ」の書籍化について

なお、「タイムリープカフェ」自体の書籍化についても、鋭意、大幅な加筆修正を加えております。姉妹ブログの「ぱうぜセンセのコメントボックス」と合体します。あちらに登場する明日香さん、進吾くん、そして「ぱうぜセンセ」が、大学1年生から卒業までの4年間を過ごす内容になります。
ブログ版を全てご覧になった方にも、書籍版から新たに読んでくださる方にも、ご納得いただけるような大改編を目指していますので、どうか今しばらくお待ちいただきますようお願いします。

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