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第3回後編:講義と自学を行き来する~インプットの心がけ

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大教室講義・少人数ゼミ・自学のトライアングル

第3回【前編】では、法学の学習は1周目では終わらないこと、むしろ2周目・3周目で面白くなってくることを紹介した。でも、大教室講義だけでは何周も出来ないのである。結論から言うと、法学を学ぶということは、【大教室講義・少人数ゼミ・自学のトライアングル】をバランス良くすすめていかなければならない、ということなのである*1

1)大教室講義

法学部の授業では、100名を超えるような大教室での講義が一般的である。ここでは、教科書等を用いながら、先生がしゃべっている内容をメモしたりして話を聞くことになる。ふむふむと聞いているだけだと、この講義は「法典の意味に関する知識の蓄積」ばかりであるような気分になって、ついつい講義をさぼりがちになったり、教科書とレジュメさえ読んでおけばなんとかなるか、と思ってしまったりする*2。しかし、実はこの講義という時間では、「どうしてそういう風に考えられているのか」「当時はどのようなことが問題になり、今はどうなっているのか」「他の箇所とのつながりはあるのか」など、教科書を読んでいるだけだとピンと来ない内容にも踏み込んで解説されている。

2)少人数ゼミ

他方、法学部では少人数(おおむね、5~15人程度)のゼミもよく行われている。ある判例について調べて報告したり、講義では踏み込めない論点について、論文なども参考にして報告するテーマ報告など、いろいろな形式がある。ここでは、報告をする人と他の参加者、そして先生とのディスカッションがよく行われる。

3)自学

そして、カリキュラム外の「自学」もまた、非常に重要である。毎回の講義やゼミのための予習・復習にとどまらない「自学」を、どこかでみっちり行う必要がある。

これら1)~3)のトライアングルのうち、今回は大教室講義と自学の関係について考えながら、インプットの心がけ実践編をお届けする*3

各回の講義にあわせた「自学」のサイクル

1年間あるいは1学期間に履修登録できる単位の上限を設けている(いわゆる「キャップ制」)大学がある。学生からみると、なんで時間割を埋めきってはいけないのかが不思議でしかたがないようだ。しかし、大学での講義は、単にその時間教室に座っていればなんとかなるというものではなく、各回ごとに予習→講義→復習→予習→講義→復習…(→実践練習)のサイクルを回すことを意識しないと、なかなか身につかない。そのためには、全ての勉強可能時間を「講義」にあててしまうと、たちまちパンクしてしまうのである。

1)予習

第3回【前編】で述べたように、法学の講義では「各回の講義に対応する部分の教科書を読む」という「虫の目」も大事だけれども、「科目全体でどのような流れになっているか」「各回ごとのつながりはどうなっているのか」を考えること、つまり「鳥の目」も大事である。そこで予習においても、「各回でやる部分を読む」ことを最低限として、余裕があれば、「科目全体」を俯瞰する視点を持っておくことが必要である。
具体的には、できれば第1回の講義が終わった頃に、その科目で指定された教科書の目次を読んでみる。毎回の講義に向けての予習は「虫の目」で行う一方、連休が挟まったり、先生の都合で休講になることがあったり、少し時間に余裕ができたときで良いので、「虫の目」の予習以外に、「鳥の目」用の予習をしてみるといい。たとえば、最近の教科書は、各章ごとに「この章の概観」や「まとめ」の項目を作っていたり、大事な言葉は太字で書かれているなど工夫されている。教科書をすべて読むのではなく、大事なところとされているところだけを飛ばし読みしてみると、各章ごとのつながりが見えてくる。

2)講義

きちんと「各回の講義に対応する部分の教科書を読む」ことができていれば、講義を受けているときに、今まで知らない単語が出てきても慌てずにすむ。もし、予習をしたにもかかわらず難しいことがあれば、教科書やノートのその部分にハテナマークを付けておこう。講義では「講義の内容」そのものだけでなく、「講義を聴いているときに自分がどう感じたか」もメモしておいたほうがよい。そこをとっかかりにして、次のサイクルに進みやすくなるからである。平板にみえる教科書の記述やノートの片隅に、少しでも自分の考えた跡が残っていると、復習のときに思い出しやすくなる。教員に質問すべきかどうか、そのときにはよくわからなくても、「何かひっかかった」ということだけはメモしておこう。

3)復習

講義をきいてよくわからなかったところがあれば、次の回が始まるまでにもう一度教科書やノートを読み返しておいた方が良い。講義中に付けたハテナマークを手がかりに、そこだけをチェックするのでもかまわない。わからなかった原因が予習の不備にあるのなら、次回以降の予習のやり方を見直してみよう。

4)試験前の実践練習

以上のサイクルをある程度こなしたら、講義で学んだことをきちんと理解しているかどうかを試すと良い。真面目な学生でも、1)~3)はしっかりやっているものの、そのままで定期試験に突入してしまい、定期試験問題を目の前にしてようやく「よくわかっていなかったことがわかった」といって頭を抱えてしまうことがある。そうならないために、まとめノートをつくったり、自分の言葉で説明してみたり、過去の試験問題を解いてみたり…というアウトプットが必要となる。アウトプットしてみてはじめて、インプットが欠けていたり、密度が足りなかったりすることに気がつくものである。この点についての詳細は次回述べることにするので、今回の読者は「毎回の講義の予復習だけだと試験問題が解けない」ということだけを覚えておいてほしい。

自分なりの「時間割」をつくる

以上の4項目について、いま現役の学生の皆さんは、どの時間に何をやっているだろうか。たとえば私が担当している「行政法1」は、週に2回(月曜日・木曜日の2限)講義がある。この講義に出席するには、講義の時間に教室にいることはもちろんとして、月曜分の予習→月曜分の講義→月曜分の復習→木曜分の予習→木曜分の講義→木曜分の復習…というように、サイクルを回していかないといけない。それに加えて、ある程度たまってきたら、まとめノートを作ったり過去の定期試験問題を解いてみたりする*4などの実践練習も必要になる。こうしてみると、担当している教員も忙しいのだけれども、授業を受ける皆さんはもっと忙しいはず。別に行政法1だけを受講しているわけではなく、他の講義もあるし、ゼミもある。レポートを書いたりしていると、ついつい後回しになってしまうだろう。
そうならないように、「この授業の予習はこの時間」というように、だいたいの時間割を組んでしまうとよい。電車の中にいる時間が長いのであれば、その体勢でも出来ることをやると決めておくなど、自分の時間の使い方を考えてみて、「自分の人生の時間割」を作ることが大事である。
なお、「何時間勉強すればいいですか?」という質問をいただくことがあるのだけれども、それに対しては「どれくらい時間があって、どれくらい時間をかければ勉強できるようになるかは人によって違うから自分で試行錯誤してください」と答えた。記事はこちら。
「何時間勉強すればいい?」が“間違っている”ワケとは
自分の「人生の時間割」をつくるのも、大学生活の醍醐味です

うまくいかなくてもくじけない

とはいえ、実際にやってみると思いのほか大変である。きっちりやろうとすればするほど、忙しくなる。まして今のような梅雨の時期は休みも少ないし、湿気にやられて体調を崩す人もいるだろう。そんなときは、完璧主義に走ってはいけない。全てを「虫の目」で最初から走りきることはできないし、ぼやぼやしていると次の講義が来てしまう。そこで、「自分なりの時間割」を立てるときには、うまくいかなかったときのための「プランB」も一緒に考えておこう。
たとえば、講義を1回休んでしまったのであれば、その部分についての「入門書」を読んだり、友達にノートを借りてコピーだけでもしておく。体調が戻ったら、それらと教科書を照らし合わせて、わからないところを教員に質問に行く等である。また、遅れを引きずらないように、次の回の予習の最低限だけは毎回欠かさないでやっておくことにしておくといい。何が「最低限」といえるのかは何度か講義を受けて自分でラインを設定してみよう。目安としては、「この講義を受けてもったいないと思わないでいられる程度」「授業がつまらなく感じてうっかり寝たりしないで済む程度」であろう。
うまくいかないときに自分を責めてもあまり良いことはない。そうであれば、「どこまでやっておけばなんとかなるかな」という視点で、復調するまで粘ってみるというのも大切なことである。

「次の自分」へのバトンタッチ

体調が悪いわけでもないけれども、なんだかモチベーションがわかないという人は、各ステップで「次の自分」がやりやすくなるように心がけてみよう。
たとえば、予習がうまくいって講義がわかるようになってきたのであれば、次の自分が「わかった」状態でいられるよう、工夫するといい。次の復習のタイミングで自分がやりやすくなるように、「あれ、よくわからないな」というところに印をつけたり、できれば「なぜわからないのか」を一言書いておくようにするとよい。また、ある程度内容が理解できれば、【前編】で例示したような「似ているけれども違うもの」などがわかりやすくなるようなノートの書き方もできるだろう*5
どうせあとで復習するのであれば、その復習するタイミングでの自分が一歩踏み出しやすくなるような工夫を積み重ねていくと良い。

次回予告

インプットの心がけを考えていくと、アウトプットにつながっていく。次回は、アウトプットの心がけとして、今回述べることができなかった「実践練習」についてと、少人数ゼミと自学の関係について考えよう。

第3回【後編】のまとめ

  1. 予習→講義→復習(→実践練習)のサイクルを回す
  2. 遅れを取り戻す「プランB」も考えておく
  3. 「次の自分」に回すコツをつかむ

*1:以下の記載は横田明美「法学部って何だっけ?-法政経学部の教員から」法学セミナー725号(2015年)39-42頁で述べたことと一部重なり合う。ぜひご参照いただきたい。

*2:末弘厳太郎「新たに法学部に入学された諸君へ」末弘厳太郎(著)、佐高信(編)『役人学三則』(岩波現代文庫、2000年)151頁(初出、法律時報9巻4号(1937年))。なお、ボランティアの手によって 青空文庫 Aozora Bunkoで電子データとして公開されている。作家別作品リスト:末弘 厳太郎を参照。

*3:少人数ゼミがどのようなものであるか、そして他の二つとどのような関係にあるかについては、次回以降、アウトプットの心がけとしてお話しする予定である。

*4:私の講義では、レジュメをアップロードする専用サイトにて、「第0回のレジュメ」と称して昨年度の試験問題とその解説(昨年度の試験後にアップロードしたもの)をあらかじめアップロードしておき、学生がこの科目を受講するかどうかの判断材料を提供している。

*5:どのようにやれば良いのかという例は、今回はあえて示さないことにするので、皆さん自身でも工夫してみていただきたい。私自身がどのような勉強をしたのかについては、今後の連載の中で取り上げることにしたい。

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